法律相談予約専用 TEL 070-5483-9947
労務管理の費用はこちら
相談解決事例(団体交渉から解雇訴訟まで)
退職勧奨の手順
退職勧奨の手順1~3・事前準備
退職勧奨の手順4~6・面談の手順や後日の対応
退職勧奨の手順0・事前検討、補足説明
退職勧奨の手順1~3・事前準備
退職勧奨とは
退職勧奨とは、使用者が、労働者に対し、労働契約の解約の申込をしたり、(労働者から使用者への)労働契約の申込をするよう勧誘・推奨したりすることを言います
退職勧奨による退職は、解雇(使用者が労働者に対して労働契約を一方的に解約すること)と異なり、労働者の意思決定による退職ですので、労働法上の解雇規制の適用はありません
もっとも、退職勧奨も、民法の適用があり、使用者が労働者へ自由な意思決定を阻害するような方法・態様で行うと、損害賠償責任や退職無効等の法的紛争に発展することがあり、注意が必要です
なお、退職勧奨による退職がなされた場合、「会社都合による失業」にあたるため、労働者は雇用保険から失業手当を受給する際、3か月間の給付期間制限を受けずに給付できます
また、退職勧奨による退職がなされた場合、「事業主の都合による離職」にあたるため、使用者は雇用調整助成金の受給要件を欠くことになるので、注意が必要です
以下、退職勧奨の具体的な手順や注意すべき事項について、説明します
退職勧奨の手順0・事前に十分に検討・対処しておくべきこと
そもそも、退職勧奨をすべきか、いつすべきかについて、実際には事前に十分に検討しておくことが重要ですが、ここでは、具体的な手順を先に述べることとして、詳細は以下に記載しています
退職勧奨の手順1・日時や場所、担当者の設定、対象労働者の呼出
設定や呼び出し
退職勧奨は、業務時間中、社内の会議室等の個室において、使用者側は管理職と上司等の合計2名が、労働者側は対象労働者1名へ、30分以内を目途に、面談で行うと良いでしょう
退職勧奨を行う当日(できれば数日前)に、使用者から、対象労働者へ、今後のことについて面談したいこと、面談をする具体的な日時や場所、印鑑を持参して欲しいことを伝えましょう
使用者側の弁護士の立ち会い(同席)の要否
使用者側で弁護士が退職勧奨の面談当日に立ち会い(同席)することは、面談当日の弁護士による使用者への支援や冷静な進行の確保という意味で有益ですが、必ずしも必要ではないように思われます
立ち会い(同席)する場合、使用者側は管理職と弁護士の合計2名として、弁護士は使用者へ支援することに徹することで、弁護士が対象労働者へ退職を強要したと主張されることを回避するよう努めます
労働者側の第三者(弁護士、他の従業員等)の立ち会い(同席)の可否
対象労働者が、使用者へ、「労働者側」で第三者の立ち会い(同席)を希望してきた場合には、同席を断るかどうかにかかわらず、奏功が見込めないとして退職勧奨自体を見送ることも検討しましょう
なお、対象労働者が、使用者へ、労働者側で弁護士の立ち会い(同席)を希望した場合、業務時間中の社内における退職勧奨であることを理由に、立ち会い(同席)を拒否することが考えられます
また、対象労働者が、使用者へ、労働者側で同僚社員等の立ち会い(同席)を希望した場合、団結権や団体交渉権を考慮すると、立ち会い(同席)を拒否することは慎重にすべきでしょう
退職勧奨の手順2・退職届等の検討や準備
退職勧奨により退職を受け入れてもらえれば、労働者が使用者へ提出する退職届(または双方が調印する退職合意書)を作成することになりますので、書面を準備する必要があります
労働者が署名押印して提出すれば退職届と退職合意書のいずれかで足りますが、その後に撤回を主張されることが心配であれば、退職届と退職合意書の双方に労働者に署名押印・提出してもらいましょう
なお、解決金を現金で渡す場合には領収書を、退職勧奨による退職後に労働者が使用者へ希望すれば交付することになる退職証明書を、それぞれ準備しておくとよいでしょう
また、退職勧奨は口頭で足りますが、便宜上、退職勧奨通知書という書面に条件や理由を記載して交付することも考えられます(なお、退職勧奨通知書は、解雇理由書と異なり、交付義務はありません)
退職勧奨通知書を作成する場合、退職勧奨が奏功せずやむなく解雇して法的紛争に発展して退職勧奨通知書の記載内容が問題とされることに備えて、対象労働者の問題事由をできるかぎり記載すべきでしょう
さらに、退職後の秘密保持義務や競業避止義務等を盛り込んだ誓約書を、労働者から使用者へ提出してもらうことも考えられますが、法的効力に疑義がありますし、無理強いは禁物です
以下では、簡易な書式を掲載していますので、適宜参考にしてみてください(なお、解決金の支払をしない場合には、該当部分を削除してください)
書式例 ※ ご利用は自己責任にてお願いします
書式例・退職届の雛形(簡易版・解決金現金渡し)※労働者のみ署名押印
書式例・退職合意書の雛形(簡易版・解決金現金渡し)※使用者と労働者の双方の調印・2通作成
書式例・退職証明書の雛形(簡易版・解決金現金渡し)※使用者のみ記名押印
書式例・退職勧奨通知書の雛形(簡易版・解決金現金渡し)※使用者のみ記名押印
書式例・誓約書(簡易版・秘密保持義務等含む)※労働者のみ記名押印
退職勧奨の手順3・解決金の要否、金額、支払方法、税務や有給休暇との関係
解決金の要否
退職勧奨では、退職を合意する際に、解決金を支払うこともすくなくありませんので、解決金の支払の可否・要否や金額の検討、支払う場合の現金の準備も必要になります
解決金を支払うことについて、基本的に支払う方向で検討すべきように思います
労働者としては、解決金の支払により、(失業手当は受け取れるとしても)転職活動中の当面の生活が保障されるという意味合いもあり、退職勧奨に応じやすくなります
もし退職勧奨が奏功せずにやむなく解雇した場合には、法的紛争に発展する可能性があり、訴訟対応の時間や労力、数十万円前後の弁護士費用や数百万円の和解金の支払が必要になることがあります
使用者としても、解決金の支払により、退職勧奨が奏功させて最終的なコストを下げたいところです
解決金の額
解決金の額をどの程度にするかは難しい問題ですが、使用者から労働者へ提示する金額としては、転職活動期間を考えると、基本給の2~3か月程度が無難ではないかと思います
また、労働者から使用者へ解決金の増額の要望があった場合には、退職勧奨理由等により、基本給の6か月程度まで増額に応じることもあれば、増額を拒否することもあるでしょう
そのため、いくらで提示するか、増額要望があったら応じるか、応じるとしてもどの程度か、即答できるよう、事前に社内で検討して担当者が裁量を得ておくと良いでしょう
なお、解雇した場合には、解雇理由にもよりますが、交渉や労働審判であれば基本給の6か月分以上、訴訟であれば基本給の1年分以上の和解金となることが多いようです
解決金の支払方法
解決金の支払方法は、金額の多寡や双方の考え方によりますが、退職勧奨の際に退職届の受領と引き換えに解決金は現金で渡すようにする方法が、望ましいと思います
その方が、退職合意がまとまりやすいでしょうし、退職届提出から解決金送金までの間に労働者が使用者へ翻意して退職届の撤回を主張することを抑制できそうです
解決金と源泉徴収税や有給休暇消化との関係
退職勧奨における解決金は、税務上、賃金と同視されることが多いようですので、正確に計算して源泉徴収して支払うか、使用者が納税リスクを覚悟して源泉徴収せずに支払うか、いずれかでしょう
退職勧奨における未消化の有給休暇は、法的にも可能ですので、退職勧奨時に未消化の有給休暇を買い取るか、有給休暇の消化期間を踏まえた退職日を設定するか、いずれかになると思います
退職勧奨時に未消化の有給休暇を買い取る場合には、解決金に買取金を含めるのかどうか、確認・協議したうえで、書面に「解決金(未消化有給休暇買取金を含む)」等と明記しておくことが望ましいです