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相談解決事例(団体交渉から解雇訴訟まで)
退職勧奨の手順
退職勧奨の手順1~3・事前準備
退職勧奨の手順4~6・面談の手順や後日の対応
退職勧奨の手順0・事前検討、補足説明
退職勧奨の手順4~6・面談当日の手順や対応、後日の対応
退職勧奨の手順4・面談当日の手順(一例)
退職勧奨は、業務時間中、社内の会議室等の個室において、使用者側は管理職と対象労働者の上司等の合計2名が、労働者側は対象労働者1名へ、30分以内を目途に、面談で行うと良いでしょう
基本的に、面談当日のやりとりは管理職と対象労働者の間で行い、対象労働者の上司はその場に同席してやりとりのメモを取る等の事務を担当することになります
冒頭で、管理職から、対象労働者へ、今後のことについて話があることを伝えます
その際、「大事な話であり行き違いがないよう、今日のやりとりは録音します」と伝えて、卓上中央にICレコーダーを設置して、録音を開始することが望ましいです
続けて、管理職から、対象労働者へ、退職して欲しいと考えていること、生活保障のために給与等とは別に解決金として基本給の○か月分を支払うことを考えていることを伝えます
併せて、退職して欲しいと考えた理由として、労働者の具体的な問題行動、就業規則の抵触、これに対する使用者の対応、改善の有無や程度について、ある程度具体的に説明します
口頭と並行して退職勧奨通知書を交付することも可能です
そのうえで、管理職から、対象労働者へ、質問や意見がありませんかと尋ねます
その際、退職勧奨に応じる義務があるのか、応じなければ解雇するのか等の質問については、使用者としては退職して欲しいと考えているが、労働者に法的義務はない等と回答すべきです
また、労働者の具体的な問題行動等の有無や評価についての意見については、労働者の意見として聞くが、使用者としては調査検討したうえでの結論である、と回答すべきです
退職勧奨の際に注意すべきこととして、使用者が労働者の自由な意思決定を阻害する行為を控える必要があり、詳細は後述します
質問や意見、それに対する回答が一通り終わったら、管理職から、対象労働者へ、退職勧奨に応じるかどうか、確認します
退職勧奨の手順4の補足・退職勧奨の際に注意すべきこと
使用者が労働者の自由な意思決定を阻害する行為を控える必要があります
具体的に言えば、以下のような説明・言動等がある場合、退職勧奨による退職がなされたとしても、後日、法的紛争において、退職は無効であると判断されることがあります
虚偽説明
「退職勧奨は拒否できない、即答しなければならない」「あなたには懲戒解雇事由がある」「実際には退職届を受理しないので社内の体裁として形だけ退職届を書いてほしい」等
脅迫的な言辞
「退職勧奨を拒否すれば懲戒解雇する、解雇する、降格させる、配置転換する」「退職勧奨を拒否して、懲戒解雇されると、その後の転職活動に支障が出る」等
威迫的な態様
誹謗中傷や人格否定の言動を伴うもの、閉鎖的な空間における多人数による1名に対するもの、他の労働者に聞こえる状況
反復継続
既に退職を明示的に拒否しているのに反復継続して執拗に行うもの、未だ退職の明示的に拒否していないものの長時間・多数回にわたるもの等
その他
「退職届を書かないと帰宅させない」等と告げて即答を迫る、退職勧奨の理由として性別や年齢等の法的に理由にならない事由をあげる、退職勧奨に前後する業務中にパワハラ・セクハラをする等
退職勧奨の手順5・面談当日の回答への対応
退職勧奨の手順5a・「応じる」との回答と対応
その場で、「応じる」という回答があれば、使用者から労働者へ退職届(または使用者が記名押印済みの退職合意書2通)と領収書を渡して、労働者に署名押印してもらいます
そして、その場で、労働者から使用者へ署名押印済みの退職届(または退職合意書1通)と領収書を提出してもらい、これと引き換えに使用者から労働者へ解決金を支払います
→ 退職勧奨の手順6a・退職が合意できた場合へ
退職勧奨の手順5b・「解決金を増額するなら応じる」との回答と対応
その場で、「解決金を増額するなら応じる」という回答があれば、その場で、希望額に応じられるかどうか、応じるとした場合でもどの程度までか、回答します
労働者の提案額に使用者が応じる場合や、使用者の再提案額に労働者が応じる場合は、退職勧奨の手順5aのように進みます
退職自体は大筋で合意できそうながら解決金の額で合意できない場合には、再度の協議の機会を設定することになります(→ 退職勧奨の手順5c・「一旦持ち帰って検討する機会が欲しい」との回答と対応)
退職勧奨の手順5c・「一旦持ち帰って検討する機会が欲しい」との回答と対応
その場で、「一旦持ち帰って検討する機会が欲しい」という回答があれば、その場で、次回日時を1~2週間後に設定して、終了します
その際、使用者は労働者へ即答を求めたくなるかもしれませんが、即答を求めると、当日、退職に応じると回答されても、後日、退職を強要された等と主張されることがありますので、注意が必要です
次回日時における退職勧奨の手順は、退職勧奨の手順4と概ね同様になりますが、退職して欲しいと考えた理由の説明等は、適宜、省略してよいと思います
退職勧奨の手順5d・「応じられない」との回答と対応
その場で、「応じられない」という回答があれば、その場で、管理職から、対象労働者へ、話し合いを打ち切るか、一旦持ち帰って再度検討しなくて本当によいか、確認します
できるかぎり退職勧奨を継続したいので、話し合いに関して明示的な拒否がなければ、再度の協議の機会を設定します(→ 退職勧奨の手順5c・「一旦持ち帰って検討する機会が欲しい」との回答と対応)
協議を明示的に拒否されれば、これ以上退職勧奨を継続しても退職を強要された等と主張されかねませんので、退職勧奨を打ち切らざるを得ません(→ 退職勧奨の手順6b・退職が合意できなかった場合)
退職勧奨の手順6・後日の対応
退職勧奨の手順6a・退職が合意できた場合
通常の退職と概ね同様に進行します
退職勧奨の面談当日または後日に、貸与品の返還、私物の持ち帰り、業務の引き継ぎ、情報の返還、その他の合意事項(競業避止、秘密保持)等を協議する(必要に応じて書面を作成する)ことになります
なお、離職票の離職理由の記載は「事業主からの働きかけによる」等を選択することになり、退職勧奨による退職の失業手当や雇用調整助成金への影響は冒頭で述べたとおりです
退職勧奨の手順6b・退職が合意できなかった場合
退職勧奨を打ち切った場合には、後日、やむなく解雇(普通解雇)するのか、当面は様子見をするのか(再度の退職勧奨をする場合1~3か月程度の間隔が望ましい)、検討することになります
解雇の手順は、ここでは詳細は省略しますが、解雇禁止や解雇理由の事前検討、解雇予告手当の当日現金交付(受領拒否なら当日送金)、使用者から労働者への解雇通知書(及び解雇理由書)の交付等になります
なお、退職勧奨を打ち切った場合、後日、解雇をしなくとも、労働者が弁護士や合同労働組合へ相談する可能性があり、後日、退職勧奨撤回や団体交渉等を求める文書が届くことがあります
また、退職勧奨を打ち切った場合、後日、退職勧奨前に発生していた事情を理由に使用者が労働者へ懲戒処分をすると、退職勧奨を拒否したら不利益処分を受けた等と主張されることがあります