【目次】
01 概要
02 解決実績の例
03 法律相談から解決までのポイント
04 やや例外的な解決方法 ※ ご覧のページです
交渉や裁判手続に先立って迅速・秘密に行う手続です
ただし、事前の準備が必要であったり、条件が厳しかったり、相応の費用が必要になったりすることがあります
【仮差押を申し立てる】
所要条件(目安) 契約書等の十分な資料、差押えの対象となる売掛金や不動産等
所要費用(目安) 着手金等、請求額または対象額の2~3割程度の担保金
裁判所に仮差押えの申立てを行う(高難易度で、通常、弁護士に依頼して行います)
契約書等の資料が十分に揃っている
仮差押の対象として売掛金や不動産等がある
(法人の預金の仮差押は△、動産の仮差押は管理費用の問題も?)
請求額または対象額の2~3割程度の担保金が準備できる
仮差押が奏功したからと言って、法律上は、その時点で仮差押えの対象について換価・回収できるわけではなく、仮差押えの対象について処分等ができなくなるだけにすぎません
したがって、本来、別途、訴訟を提起して勝訴することが必要になります
もっとも、取引先の第三者に対する売掛金を仮差押えできれば、取引先の資金繰りや信用に大きな影響を与えることになりますから、仮差押えの解除を求めて取引先からご相談企業様へ支払がなされることが期待できます
なお、担保金は原則として勝訴判決を得た場合等に返還されますが、提訴から勝訴判決までに一定期間を要するため、その間、供託した状態が継続しますし、万一敗訴した場合には、損害賠償請求を受けてその引き当てとされてしまうことがあります
【担保権の実行等】
・抵当権設定登記を受けている場合
所要条件(目安) 事前に抵当権の設定を受けていること
所要費用(目安) 着手金等、数十万円の予納金
裁判所へ不動産競売手続を申し立てる
事前に抵当権の設定を受けている必要はあるほか、申立時に数十万円の予納金も必要ですが、比較的単純な手続であり、弁護士に依頼せずとも可能です
なお、他に抵当権等が設定されている等で無剰余とされて競売できない場合や、競売にかけても落札されない場合があります
相手方が破産等しても回収できます(別除権・ただし、否認される場合)
なお、一定の場合には、取引先が自ら所有して第三者に賃貸している不動産につき、賃料債権を物上代位して差押えする(民事執行法193条1項後段、民法304条1項・372条)、担保不動産収益執行を申し立てて賃料債権を売掛金等の弁済に充てる(民事執行180条2号)等の方法もあります
・(集合)債権譲渡担保を受けている場合
所要条件(目安) 事前に集合債権譲渡の設定や登記を受けていること等
所要費用(目安) 着手金等、数万円の登記費用等
取引先の売掛先に債権譲渡担保権実行通知等を発送する
事前に集合債権譲渡担保の設定を受けている必要はあるほか、数万円の登記費用がかかりますが、比較的単純な手続であり、弁護士に依頼せずとも一応可能です
もっとも、実行条件(取引先の買掛先に対する支払停止等)が成就した時点で、速やかに実行通知を発送する必要があります
また、取引先の売掛先に対する債権に集合債権譲渡担保を適切に設定・管理しておかないと、実行した時点で取引先の売掛先に対する債権が残存していないことがあります
相手方が破産等しても回収できます(別除権・ただし、否認される場合)
・(集合)動産譲渡担保等を受けている場合
所要条件(目安) 事前に集合債権譲渡の設定や登記を受けていること等
所要費用(目安) 着手金等、動産の運搬・保管の費用等
裁判所へ動産引渡し断行の仮処分を申し立てる
事前に集合債権譲渡担保の設定を受けている必要はあるほか、対象となる動産について、裁判所へ動産引渡し断行の仮処分を申し立てたうえで、動産を運搬・保管する必要があります
なお、動産引渡し断行の仮処分等の法的手続をせずに無断で動産を運搬すると、逆に損害賠償請求をされたり窃盗罪等の犯罪に問われたりすることがあります
相手方が破産等しても回収できます(別除権・ただし、否認される場合)
ちなみに、動産の運搬・保管等の実務的な部分でハードルが高いので、私自身は弁護士として相談を受けて検討したことはあっても、実際に依頼を受けたことはありません
・所有権留保を合意している場合
所要条件(目安) 事前に所有権留保を合意していること
所要費用(目安) 着手金等、動産の運搬・保管の費用等
破産等に至っていない場合か、破産等に至っている場合かで、対応が異なります
破産等に至っていない場合
商品売買契約の停止条件付解除通知(相当期間内に商品売買代金を支払うよう催告するとともに、相当期間内に支払われなければ商品売買契約を解除して、所有権に基づき返還を求める旨)を送付したうえで、あるいは所有権留保を合意しているとしたうえで、返還を求めます
なお、所有権留保だからと言って、無断で動産を運搬すると、逆に損害賠償請求をされたり窃盗罪等の犯罪に問われたりすることがあります
破産等に至っている場合
破産等に至っている場合、所有権留保を合意していても、通常、実質的に担保目的と評価されるため、破産法上、取戻権としては評価されず、別除権として評価されます
そのため、破産管財人へ引渡しを求め、換価したうえで、余剰があれば破産管財人へ余剰を引き渡して清算することになります
・動産先取特権がある場合
所要条件(目安) 動産先取特権が成立していること
所要費用(目安) 着手金等、(動産の運搬・保管の費用等)
ご相談企業様が取引先へ動産を売却したものの、商品売買代金が未払いのときには、その売買した動産につき、動産先取特権を行使することができます(民法311条5号)
売買した動産が、取引先の手元にあるのか、第三者の手元にあるのかで、手続が変わります
売買した動産が取引先の手元にあるとき
裁判所へ動産競売の開始許可の申立て(民事執行法193条1項3号)
なお、旧民事執行法の下では、動産仮差押え申立てが必要とされていたようですが、現行の民事執行法の下では、動産競売の開始許可の申立てで足ります
商品売買契約書や納品書等の資料が必要なほか、動産の運搬や保管の費用等が必要になります
取引先が破産等しても回収できます(別除権・ただし、否認される場合)
売買した動産が第三者の手元にあるとき
裁判所へ担保権の実行としての債権差押命令申立
一定の場合には、取引先の第三者に対する売掛金を、物上代位して差し押さえすることができます(民事執行法193条1項後段、民法304条1項)
取引先がどの第三者へ売却したかわかっていること、第三者から取引先へ代金がまだ支払われていないこと等が必要ですので、実質的に第三者の協力が必要でしょう
取引先が破産等しても回収できます(別除権・ただし、否認される場合)
【その他】
・債権譲渡と相殺
ご相談企業様が、取引先の第三者から、ご相談企業様の取引先に対する売掛金を買い取ってもらい、取引先の第三者から、取引先へ、ご相談企業様の取引先に対する売掛金(債権譲渡済み)と取引先の第三者に対する売掛金を対当額で相殺するとの意思表示をしてもらうこともあります
あるいは、ご相談企業様が、取引先の第三者から、第三者の取引先に対して負担している買掛金(債務)を引き受け、ご相談企業様から、取引先へ、ご相談企業様の取引先に対する売掛金と取引先の第三者に対して負担する買掛金(債務引受済み)を対当額で相殺するとの意思表示をすることもあります
いずれにせよ、第三者とご相談企業様の協力・連携が不可欠です
また、相殺禁止特約が付されている等、債権の性質上相殺を許さない場合や、倒産等の場合には、相殺できないことがあります