法人(中小企業)の民事再生(前)

もう数年以上前になりますが、九州に所在する複数の法人(中小企業)のご依頼者様の民事再生手続事件を複数、担当しました。

私の経験やイメージでは、法人の民事再生では申立から終結決定まで実際には数年を要することもすくなくないように思います。
では、数年もかけて法人の民事再生では実際に何をするのでしょうか。

ここでは、一般的な話として差し支えない範囲で、

・法人の民事再生を利用する場面(タイミング)・業種
・法人の民事再生を利用する目的・要件・効果
・法人の民事再生における主な図式(スキーム)とその比較
・事業譲渡(ビット型+計画外事業譲渡)で主にやるべきこと

について、前編後編にわけて、紹介してみたいと思います。

法人の民事再生を利用する場面(タイミング)・業種

法人の民事再生は、資金繰りに窮している場面で、業種を問わず利用されています。

ポイントとしては、「資金や在庫等のコントロールが可能な早めの段階で利用を決断すること」にあると思います。

申立後は、保全処分により支払を停止しつつも従前の在庫を活用することができますが、申立により経済的な信用がなくなりますから、新たに在庫を調達するには現金での支払が要請されます。

申立時に一定の資金や在庫を確保した状態でなければ、申立後に新たな在庫調達のための資金繰りに窮することになりかねませんので、申立日を選ぶ余裕のあるうちに申立を決断すべきです。

なお、銀行が企業に対し民事再生の申立を促す場合もあります。 民事再生手続において事業譲渡することを念頭に、申立前の時点で、銀行等が特定のスポンサーを用意する場合をプレパッケージ型と呼びます。

企業が再生を実現するためには申立後も取引先と取引を継続する必要がありますが、申立後も取引先が取引を継続してくれるかどうかは、まさにその企業の事業の真価が問われる場面です。

法人の民事再生を利用する目的・要件・効果

まず、民事再生の目的としては、いろいろありますが、

・事業の再生を図る(法律上の目的)
・地域の雇用を守る(事実上の目的)

といったあたりが中心になると思います。

次に、民事再生の要件としては、

・支払不能
(または事業の継続に著しい支障を来すことなく弁済期にある債務を弁済することができないとき)

等とされています。

また、効果としては、

・民事再生手続の外の手続における個別取立の原則禁止
・再生計画案による一部免除等の権利変更

等があります。

なお、法人の民事再生において権利変更がなされても、債権者の法人代表者に対する連帯保証債務履行請求権については、権利変更の効果は及びませんので、その点は注意と理解が必要です。

代表者が破産手続開始申立をすることもすくなくありません。

後編に続きます

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